ユスリカとは?蚊との決定的な違いや大量発生の理由・対策を徹底解剖

ユスリカとは?蚊との決定的な違いや大量発生の理由・対策を徹底解剖

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川沿いの土手や街頭の真下、あるいは帰宅途中の歩行者の頭上を追いかけるように形成される黒い煙のような群れは、通称「蚊柱(かばしら)」と呼ばれます。この塊の中に飛び込んでしまうと無数の虫が衣服や髪に付着しますが、昆虫行動学の調査において構成個体の99%以上が雄(オス)であることが判明しています。

蚊柱は専門用語で「スウォーム(Swarm/群飛)」と呼ばれ、ユスリカにとっての巨大な配偶行動(婚活の場)です。視界の開けた場所や、周囲より一段高く突き出た物体(電柱、高木、歩行者の頭部など)を目印として雄たちが一箇所に集結します。雄たちは集合して羽音を鳴らし、特定の周波数を共鳴させます。この音に引き寄せられたわずかな雌(メス)が群れの中に飛び込み、空中で瞬時にペアリングを完了させて水辺へと産卵に向かうという繁殖システムです。

ユスリカが特定の季節や水域で桁外れの大量発生を起こす背景には、幼虫(アカムシ)の強靭な生理的メカニズムが存在します。

ユスリカの幼虫は、釣り餌や熱帯魚の餌として知られる「赤虫(アカムシ)」です。体が鮮やかな赤色をしているのは、人間の血液と同じヘモグロビン(血色素)を体液中に豊富に含んでいるためです。ヘモグロビンを持つ昆虫は極めて珍しく、これによって酸素濃度が極端に低いヘドロの底や汚濁の進んだ都市部の側溝、富栄養化した湖沼でも窒息せずに生存できます。天敵となる小魚が生息できない劣悪な貧酸素水域を独占できるため、外敵に捕食されることなく短期間で爆発的な増殖を遂げます。

発生時期は一般的に気温が上昇する4月〜10月がピークですが、例外的な種も存在します。例えば、愛知県や岐阜県を流れる木曽川流域では「ソブエムシ」の通称で恐れられるフユユスリカ属の「キソガワフユユスリカ」や「コキソガワフユユスリカ」が有名です。これらは12月〜2月の厳冬期に羽化して河川敷周辺を埋め尽くします。種によって発生時期をずらしながら、日本の水辺環境全般に適応している点が大量発生の基盤にあります。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。