『3月9日』が国民的卒業ソングとしての地位を決定づけた契機には、2つの大きなメディア的要因が存在します。それが名作ドラマでの劇中演出と、女優・堀北真希を起用したショートフィルム風MVです。
2005年に放送され社会現象となったドラマ『1リットルの涙』(フジテレビ系・沢尻エリカ主演)。難病と闘う主人公の青春を描いた本作において、『粉雪』が挿入歌として感情を揺さぶる一方で、第8話の合唱コンクールシーンでは『3月9日』が生徒たちによって合唱されました。病状が進行する主人公を囲み、クラスメイト全員が涙をこらえながら歌声を響かせるこの名場面は、視聴者の脳裏に「3月9日=青春の絆と合唱」というイメージを強烈に焼き付けました。
さらに、リリース時に制作された公式ミュージックビデオ(森淳一監督)の存在も見逃せません。当時まだデビュー直後だった堀北真希が主人公の女子高生を熱演。自身の高校の「卒業式」を終えた彼女が、姉の「結婚式」へと出席する姿が描かれています。「学校からの旅立ち」と「家族の門出」という2つのセレモニーを一つの映像の中で見事に交差させたこのMVは、楽曲本来の結婚祝いというルーツと、卒業ソングとしての受容を見事に橋渡しするマスターピースとなりました。
ドラマ放映後、教育出版各社から混声三部合唱や同声二部合唱の楽譜が相次いで出版され、2000年代後半以降、全国の中学校・高校で卒業式の式歌や合唱コンクールの課題曲として正式採用される流れが定着しました。