モンキー・パンチが遺したルパン三世の真実|原作の毒とアニメの光

モンキー・パンチが遺したルパン三世の真実|原作の毒とアニメの光

モンキー・パンチが遺したルパン三世の真実|原作の毒とアニメの光にまつわる興味深い視点を分かりやすく発信ます。

テレビアニメから『ルパン三世』に入った読者が原作コミックスを開いた際、真っ先に直面するのがその暴力性と冷徹なエゴイズムです。原作におけるルパン一味は「仲間」というよりも「利害の一致による共犯関係」であり、出し抜き合いや裏切りは日常茶飯事でした。アニメ版で定着した「弱きを助け、女性に優しいルパン」という像は、大衆メディアであるテレビ放映に向けた大胆な翻案の産物です。

1971年に放送が開始されたテレビアニメ第1シリーズ(通称・緑ジャケット)は、当初大隅正秋監督のもとで徹底した大人向けハードボイルドとして制作されました。しかし当時の夕方帯放送では過激な描写や複雑な心理戦が敬遠され、視聴率は3〜6%台と低迷を極めます。制作サイドのテコ入れとして招聘されたのが、高畑勲と宮崎駿のコンビでした。ふたりはルパンの無軌道な犯罪性を「体制へのアナーキーな反逆」と「人間味あふれる快男児」へと昇華させ、作品に新たな息吹を吹き込みました。

比較項目原作漫画(モンキー・パンチ)アニメ第1・第2シリーズ宮崎駿版(『カリオストロの城』)ルパンの基本性格冷酷、利己的、知性的狂気、情を排したピカレスク陽気で洒脱、義理堅い、フェミニスト黄昏れた中年、自己犠牲的な純情さ、影のある騎士道暴力・性的描写直接的な殺傷、過激な性描写を一切タブーとしないコミカルなガンアクション、お色気シーン(不二子)直接的殺傷を回避、お色気の完全排除銭形警部との関係知力と罠を尽くして互いを抹殺しようとする宿敵追いかけっこの好敵手、奇妙な連帯感と信頼正義を信じる実直な警察官、時に共闘する盟友物語の結末構造決着なき騙し合いの連続、刹那的な煙幕エンド夕日を背にした逃走、永遠に続く日常の反復ヒロインの心を奪い去るロマンティックな完結

ファンの間で今なお語り草となっているのが原作の結末です。1969年4月の第一部連載終了時、ルパンと銭形は仕掛け合いの末に生死不明となる幕引きを迎えました。感傷的なフィナーレを拒み、乾いたサスペンスのまま物語の幕を降ろす手法は、モンキー・パンチが掲げた「記号としての怪盗劇」の美学を何よりも如実に物語っています。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。