テレビアニメから『ルパン三世』に入った読者が原作コミックスを開いた際、真っ先に直面するのがその暴力性と冷徹なエゴイズムです。原作におけるルパン一味は「仲間」というよりも「利害の一致による共犯関係」であり、出し抜き合いや裏切りは日常茶飯事でした。アニメ版で定着した「弱きを助け、女性に優しいルパン」という像は、大衆メディアであるテレビ放映に向けた大胆な翻案の産物です。
1971年に放送が開始されたテレビアニメ第1シリーズ(通称・緑ジャケット)は、当初大隅正秋監督のもとで徹底した大人向けハードボイルドとして制作されました。しかし当時の夕方帯放送では過激な描写や複雑な心理戦が敬遠され、視聴率は3〜6%台と低迷を極めます。制作サイドのテコ入れとして招聘されたのが、高畑勲と宮崎駿のコンビでした。ふたりはルパンの無軌道な犯罪性を「体制へのアナーキーな反逆」と「人間味あふれる快男児」へと昇華させ、作品に新たな息吹を吹き込みました。
ファンの間で今なお語り草となっているのが原作の結末です。1969年4月の第一部連載終了時、ルパンと銭形は仕掛け合いの末に生死不明となる幕引きを迎えました。感傷的なフィナーレを拒み、乾いたサスペンスのまま物語の幕を降ろす手法は、モンキー・パンチが掲げた「記号としての怪盗劇」の美学を何よりも如実に物語っています。