岩下志麻の現在を語る上で欠かせないのが、夫である映画監督・篠田正浩の存在です。篠田監督は1931年生まれであり、2026年時点では90代半ばという高齢を迎えています。2003年のメガホン作『スパイ・ゾルゲ』を最後に監督業を引退して以降、執筆活動や文化活動を行いながら、志麻夫人と二人で静かな余生を送っています。
二人の間には子供がいません。昭和の芸能界において、スター同士の夫婦が「子供を持たない」選択をすることは、時に世間からの好奇の目に晒されることもありました。しかし二人は、監督とミューズという仕事上のパートナーであり、一人の自立した人間同士として対等に向き合う道を選びました。
篠田監督はかつて手記や対談で妻について「家庭に帰れば極めて繊細で少女のような芯を持つ人」と語り、志麻自身も「夫は人生における最高の理解者であり、知性の羅針盤」と敬意を払い続けています。お互いに過度な依存をせず、独立した個として尊重し合う姿勢は、現代のシニア夫婦が直面する「老後の共依存」や「介護クライシス」に対するひとつの理想的な回答と言えるでしょう。