大晦日の風習と縁起の筆頭格である年越しそばですが、「いつ食べるのが正解なのか」という論争は毎年SNS上でも激しく交わされます。一般社団法人日本麺類業団体連合会の記録や江戸期の風俗史料を照らし合わせると、食べる時間帯そのものに厳格な分単位の指定はないものの、絶対に避けるべきタイミングが1つだけ存在します。それが「年をまたぎながら食べること」です。
細く長い麺にちなんだ「延命長寿」、切れやすい性質から「1年の災厄・借金を断ち切る」という縁起を担ぐ年越しそばは、年内に食べ終わらなければ「旧年の厄を新年にまで持ち越してしまう」と解釈されます。消化器病専門医の臨床データでも、深夜0時直前の急激な糖質摂取は睡眠の質を著しく下げ、元旦の胃もたれを引き起こす要因になると指摘されています。夕食の主食として18〜20時台に味わうか、遅くとも夜食として22〜23時頃までに食べ切るスケジュールが心身双方にとってベストと言えます。
そして深夜23時を過ぎると、全国の寺院から響き渡るのが除夜の鐘の由来と意味に直結する荘厳な響きです。除夜の「除」は「古いものを去り、新しいものに替わる」ことを意味します。突かれる回数の基本である「108」は、仏教において人間が持つとされる108の煩悩に由来する説が有力です。これは眼・耳・鼻・舌・身・意の「六根(ろっこん)」が、好・悪・平の「三類」、さらに染・浄の「二類」に分かれ、それぞれが前世・今世・来世の「三世」にわたることで(6×3×2×3=108)生じる計算です。また、1年の12カ月・24節気・72候を合算した数(12+24+72=108)とする説や、四苦八苦(4×9+8×9=108)を払う意味合いも重なり合っています。多くの寺院では107回を年内に打ち鳴らし、最後の1回を年が明けた瞬間に響かせることで、新たな年の清浄を祈願します。