地鳴らしの発動によってジークがエレンに取り込まれ、自らの描いた神話が音を立てて崩壊したとき、イェレナは完全に生きる気力を失いました。フロック・フォルスター率いるイェーガー派に拘束され、反逆者として公開処刑されそうになるものの、すんでのところでハンジ・ゾエやマガトらに救出されます。
その後、飛行艇の発着場を目指す過程でマガトから厳しい尋問を受け、腕を骨折させられながらも、彼女はジークの向かった目的地(スラトア要塞)に関する決定的な情報をアライアンス一行に提示しました。この時点で彼女はジークへの信仰を捨ててはおらず、ただ自らが関与した劇の結末を見届けたいという執着のみで動いていました。
激戦の最中、負傷したイェレナはアズマビト家のキヨミが手配した救命艇に移送され、戦線から離脱します。このため「途中で海に沈んだのではないか」「処刑されたのではないか」という死亡説が一部で囁かれていましたが、原作最終話(第139話)によってその真相は完全に証明されました。
エレンの死から3年後、復興が進む世界の一角(難民キャンプのような居住区)において、車椅子のリヴァイ・アッカーマンやガビ、ファルコの背後で、黙々と物資の運搬作業に従事するイェレナの後ろ姿が明確に1コマ描かれています。彼女は生き延びていたのです。
神話を創り上げようとした扇動者が、歴史の主役として華々しく散ることも叶わず、名もなき一個人の労働者として生き続ける結末――これこそが原作者・諫山創氏がイェレナに用意した、冷徹で最も味わい深い救済のかたちでした。