本作のもう一つの主役は、歯切れよく画面を飛び交う江戸言葉の数々だ。「てめえ」「べらぼうめ」「すっとこどっこい」。現代の日常会話からは姿を消しつつあるこれらの方言は、かつての江戸っ子にとって呼吸そのものであった。
テレビ放送業界において、方言や古語の再現は常に「聞き取りやすさ」とのトレードオフを強いられる。過度に本格的な発音や言い回しを追求すれば、現代のライト層は物語から振り落とされかねない。しかし本作の制作陣は、妥協なきリアリティを選択した。
早口で巻き舌混じりの台詞回し、リズミカルな掛け合い、そして行間に込められた情と毒。役者陣の徹底した訓練によって、江戸言葉は耳障りな雑音ではなく、心地よい音楽のようなグルーヴとなって物語を前へ前へと推進させている。