インターネット上では長年、「タエ子は実は途中で事故死していた」「最後の列車シーンは幽霊の幻覚」といった都市伝説が囁かれています。しかし、これらは作品のリアリズムを誤認した完全なデマです。高畑勲監督が一貫して追求したのはオカルトではなく、「徹底した日常の質感と人間の心理的リアリズム」でした。
異例の「プレスコ製法」と豪華声優キャスト
本作では日本のアニメーションとしては極めて異例のプレスコ製法(台詞を先に録音し、その声や表情に合わせてアニメーションを描く手法)が採用されました。大人のタエ子役を演じた今井美樹、トシオ役の柳葉敏郎の表情や口元の筋肉の動きが徹底的にスケッチされ、アニメーションに反映されています。
- 岡島タエ子(27歳):今井美樹(自然体の演技とリアルな笑いジワの造形)
- 岡島タエ子(小学5年生):本名陽子(後に『耳をすませば』月島雫役)
- トシオ:柳葉敏郎(山形弁の指導を受け、素朴で地に足のついた青年を好演)
- タエ子の母:寺田路恵 / タエ子の父:伊藤正博
名曲「愛は花、君はその種子」が持つメッセージ性
主題歌である都はるみの「愛は花、君はその種子」は、ベッド・ミドラーが歌ったアメリカ映画『The Rose』の主題歌を高畑監督自らが日本語訳詞した楽曲です。演歌界の至宝である都はるみを起用したこの曲は、「愛は傷つくことを恐れる心ではなく、冬の雪の下で春を待つ種子である」という人生の再生を高らかに歌い上げ、映画のテーマ性を完璧に補完しています。