冷凍したレンコンを取り出したとき、「表面が黒や紫色に変色していた」「火を通したらスポンジのようにスカスカになって水っぽかった」という失敗は後を絶ちません。これらは単なる保存期間の長さではなく、レンコンが冷凍でスカスカや変色を起こす明確な化学的・物理的理由が存在します。
変色の主原因は、レンコンに豊富に含まれるポリフェノール系物質(タンニン等)と酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)の働きにあります。レンコンを切ることで細胞が傷つき、酵素が空気中の酸素に触れると急速に酸化反応が進行し、メラニン様の暗褐色物質が作られます。また、レンコンに含まれる成分が鉄分などの金属イオンと結びつくことで、青紫色に変色することもあります。これを食い止めるには、酸性環境(酢水)で酵素の活性を阻害するか、加熱によって酵素そのものを失活させることが不可欠です。
一方、スカスカ食感やゴム化の原因は緩慢凍結(時間をかけた凍結)による氷結晶の肥大化です。家庭用冷凍庫で常温のままゆっくり凍らせると、細胞内の水分が大きな氷の結晶へと成長し、レンコンの緻密な細胞壁を内側から突き破ってしまいます。その結果、加熱調理時に破壊された細胞から大量の水分(ドリップ)が流れ出し、繊維質だけが残ってカサカサの食感になってしまうのです。
この現象を防ぐ鍵は「急速冷凍」と「熱伝導」にあります。レンコンの水分をキッチンペーパーで限界まで吸い取った後、アルミホイルに包むか、金属トレイ(アルミバット)の上に置いて冷凍庫に入れることで、氷結晶が大きくなる温度帯(マイナス1℃〜マイナス5℃)を一気に通過させ、細胞破壊を最小限に抑えることができます。