言葉と切っても切り離せないのが、胸の前で両手を合わせる合掌作法「ワイ(ไหว้)」です。しかし、日本の旅行者が犯しがちな致命的ミスとして、タイ語ワイの合掌マナーを形式的なお辞儀と同じだと錯覚し、相手を選ばず見境なしに合掌してしまうケースが後を絶ちません。
現地駐在員や異文化コミュニケーション研究者の証言によると、ワイは「対等な相手」または「自分よりも立場が上の相手」に対して敬意を表す所作であり、タイの厳格な年功序列・階層秩序を反映しています。相手の属性によって、手を合わせる位置は明確に3段階に規定されています。
第1段階は友人・同僚など対等な関係です。両手を胸の高さに合わせ、親指を胸の位置に置いたまま軽く頭を下げます。
第2段階は両親・教師・上司・年長者など敬うべき相手です。親指を鼻の頭に、人差し指を眉間に当てる深さまで頭を下げて敬意を明確に示します。
第3段階は僧侶や王族、仏像に対する最上級の合掌です。親指を眉間に添え、人差し指を生え際まで持っていくように深く頭を垂れます。
ここで旅行者が最も注意すべき盲点が「店員や子供に対するワイの乱用」です。コンビニの店員、ホテルのベルボーイ、レストランのウェイター、タクシー運転手などは、サービス業務として客に対してワイをしてきます。これに対して客側が過剰に背筋を正してワイを返してしまうと、現地では「身分や立場の秩序を弁えていない不自然な行動」と映り、かえって相手を狼狽させる結果となります。
サービス提供者からワイを受け取った際の正しい大人のマナーは、ワイを合掌で返すのではなく、笑顔で軽く目礼(会釈)し、「サワディーカップ/カー」または「コップンカップ/カー」と口頭で返すことです。子供に対して大人がワイをするのも絶対的なタブーとされています。