今季のアビスパ福岡が披露するゲームにおいて、多くの専門家やサポーターの目を奪っているのが「監督采配と戦術の柔軟性」です。従来のアビスパ福岡といえば、自陣深くで強固なブロックを敷き、ボールを奪ったら一直線に前線へ送り込む直線的なカウンターの印象を持たれがちでした。しかし、現在のピッチ上で起きている現象は、その固定観念を根底から覆すものです。
試合後の記者会見で指揮官が「相手がボールを握る時間帯を想定しつつ、どのエリアで奪えば一気に相手の急所を突けるか、選手たちがピッチ内で見事に判断してくれた」と語った通り、局面ごとの意思統一が極めて高度に仕組まれています。
直近の白熱した試合において、勝敗を分けた理由は明確に3点存在します。
第1に、ミドルサードにおける守備網の可変です。相手のビルドアップに対して前線から闇雲に追うのではなく、相手ボランチへのパスコースを遮断しながらサイドへ誘導し、タッチライン際で挟み込むトラップを徹底。これにより相手の攻撃速度を著しく鈍化させました。
第2に、スタメン発表から読み取れる戦略的布陣の妙です。対戦相手のストロングポイントであるウイングの突破力を無効化するため、サイドバックに守備強度の高い実力者を先発起用。キックオフ2時間前にJリーグ公式アプリやクラブ公式SNSでスタメン発表が行われた際、戦術通の間では「完全に相手のストロングを消しに来た」と話題を集めましたが、その狙いが90分間を通じて完璧に結実しました。
第3に、後半勝負を想定した交代枠の投入タイミングです。相手の運動量が目に見えて落ち始める後半20分過ぎ、前線へ推進力のあるスプリンターを同時投入。プレッシングのギアを一段引き上げ、相手守備陣の連携ミスを誘発して奪った先制ゴールが、そのまま決定打となりました。まさに緻密なスカウティングとベンチワークの勝利といえます。