中東や欧米の砂漠気候では気温が45度を超えても湿度が10%台に落ちるため、湿球温度は25度前後に抑えられます。一方、日本列島は四方を暖流に囲まれ、太平洋高気圧から湿った南風が絶え間なく吹き込むため、気温の上昇とともに湿球温度も高止まりする過酷な環境が形成されます。
都市部で湿球温度が下がらない理由には、ヒートアイランド現象とアスファルトの蓄熱に加え、夜間になっても湿度が80〜90%近くまで跳ね上がる現象が関係しています。昼間に温められた空気が冷え切らないまま湿気だけが増加するため、夜間であっても湿球温度が危険水準から下がりません。
さらに深刻なのがエアコンの冷却限界です。一般的な空調設備は空気中の熱と水分を取り除いて室外機から排出しますが、外気の湿球温度が過剰に高くなると熱交換器の結露水処理や放熱効率が著しく低下します。室外機周辺が高温多湿に包まれるとコンプレッサーに過剰な負荷がかかり、設定温度を下げても冷えにくくなる「過負荷停止」のリスクが高まります。日本の夏においては、単に風を当てるだけでなく、除湿(再熱除湿など)を効果的に使って室内の湿球温度を直接下げる工夫が欠かせません。