音楽社会学の視点:権威主義的アワードとアルゴリズム型ヒットの共存
昭和・平成の芸能界において、レコード大賞はテレビ・新聞・大手レコード会社が三位一体となって大衆の流行を決定づける「トップダウン型の権威」でした。しかし、ストリーミングサービスとアルゴリズムが個人の好みを細分化させた令和において、大衆全員が共有する「単一の国民的ヒット」は生まれにくくなっています。
このような産業構造の変化において、日本レコード大賞および新人賞が果たすべき役割は、「数字の追認」だけではありません。無数のバイラルヒットの中から、確かな歌唱力・演奏力・将来性を持つアーティストをプロの視点でキュレーションし、テレビという最大級のマス媒体を通じて世代を超えた架け橋を架けることにあります。
アーティストとファンが見出すべき健全なバウンダリー
賞レースの結果に対して過度に一喜一憂したり、「出来レース」と切り捨てて対立を深めたりすることは、音楽文化の健全な発展にとって建設的ではありません。
アーティスト側にとっても、賞の獲得はゴールではなく、キャリアの初期ブーストに過ぎません。受賞を糧にして独自の音楽性を深められるか、あるいは賞のイメージに縛られずに自立した活動を続けられるかという「アーティストとしての心理的・戦略的バウンダリー(境界線)」の確立こそが、長期的なサバイバルを分ける決定的な要素となります。