本作における村瀬亜樹のキャラクター造形は、放送当時すでに死語になりかけていた「古き良き時代の女」という概念をあえて軸に据えていました。いつ戻るかもわからない恋人を信じて待ち続ける態度は、一見すると依存的あるいは時代遅れな設定に受け取られかねない危うさを孕んでいました。
しかし、竹内結子さんの卓越した演技力がその懸念を完全に払拭しました。彼女が演じた亜樹は、単なる従順な女性ではなく、自分の選択に対して一切の言い訳をしない「強靭な内面」を秘めていたのです。オフィスで書類を整理する際の無駄のない所作、ハルと向き合うときの真っ直ぐな瞳の輝き、そしてふとした瞬間にこぼれ落ちる孤独の翳りなど、台詞の行間に存在する感情を緻密に立ち上がらせていました。
当時の特番インタビューや現場関係者の証言によると、竹内さんは脚本の野島伸司氏が紡ぐ独特のポエティックな台詞に対し、徹底的に日常のリアリティを吹き込むアプローチを重ねていたと伝えられています。劇中で見せた屈託のない笑顔と、ハルの痛みを察した瞬間の慈愛に満ちた表情のコントラストは、視聴者に「この女性になら心の傷を預けられる」と確信させるだけの強い説得力を持っていました。