原作とアニメで学年が異なる最大の原因は、小学館が発行していた「学年別学習雑誌(『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』〜『小学六年生』)」における前代未聞の同時並行連載という出版形態にありました。
1969年12月(1970年1月号)から連載がスタートした『ドラえもん』は、ひとつの雑誌に掲載されていたわけではありません。藤子・F・不二雄先生は、なんと幼稚園児向けの雑誌から小学6年生向けの雑誌まで、毎月それぞれの対象読者の年齢層に合わせて別々のエピソードを描き分けていました。そこで採られた画期的な手法こそが、「掲載誌の読者と同じ学年にのび太の学年を設定する」という試みだったのです。
つまり、『小学三年生』を読んでいる子どもたちの目の前にいるのび太は「小学3年生」として登場し、漢字の習熟度やストーリーの難易度も3年生向けに調整されていました。同様に『小学五年生』の誌面ではのび太は「小学5年生」であり、恋愛感情を意識したエピソードや複雑なSFプロットが展開されていたのです。読者が自分自身の等身大の悩みや日常をそのまま投影できるよう、のび太はあえて学年を固定されずに描かれていました。
では、なぜ原作単行本では「小学4年生」の印象が強くなったのでしょうか。のちに「てんとう虫コミックス」として全45巻に再編・単行本化された際、ギャグのキレやストーリーの完成度、そして読者層のボリュームゾーンを考慮した結果、『小学三年生』および『小学四年生』向けに描かれたエピソードが最も多く収録されたためです。単行本第1巻の冒頭でものび太は4年生として登場しており、コミックス派の読者には「のび太=小学4年生」という認識が深く刻み込まれる結果となりました。
一方、1979年にテレビ朝日系で全国規模のテレビアニメがスタートした際、制作サイドは毎週視聴する幅広い年代の子どもたちに向けて基本設定をひとつに統合する必要に迫られました。低学年の視聴者から見れば「少し頼もしいお兄さん・お姉さん」であり、高学年や中学生から見ても「少し抜けているけれど共感できる同年代」として絶妙な立ち位置を保てるのが、小学校の高学年への入り口である「小学5年生」だったのです。