広内仁氏のキャリアを振り返る上で欠かせないのは、現場の営業担当者から最高経営責任者にまで登りつめた類まれな突破力です。1971年に樫山(現オンワード樫山)に入社後、主に営業や企画の第一線で頭角を現しました。氏の出世作として語り継がれるのが、1993年に立ち上げられたレディスブランド「23区」の育成です。バブル崩壊後の消費低迷期において、洗練されたキャリア女性の日常着という新市場を切り拓き、年間売上高数百億円規模を誇るオンワードの基幹ブランドへと成長させました。
この功績を引っ提げ、2005年にオンワード樫山社長、2007年には持株会社体制への移行に伴いオンワードホールディングス社長へと就任。さらに後には代表取締役会長を務めるなど、10年以上にわたりグループの最高権力者として君臨しました。
広内体制の最大のハイライトは、果敢なグローバルM&A戦略でした。2005年の英高級ブランド「ジョセフ(JOSEPH)」の買収を皮切りに、2008年にはイタリアの高級メゾン「ジル・サンダー(JIL SANDER)」を約244億円で買収。欧州のラグジュアリー市場へ直接打って出るという当時の日本アパレルとしては破格のスケール感は、国内外のメディアから「日本発のコングロマリット誕生」と大きく報じられました。