では、なぜ「うろ」という言葉が使われているのだろうか。国語学的なアプローチからその語源を紐解くと、大きな樹木にできる空洞を意味する「洞(うろ)」や「空(うろ)」に行き着く。つまり、中身がからっぽでうつろな状態を指す言葉であり、「記憶の中身がスカスカで確実性に欠けること」を「うろ覚え」と表現したのが始まりだ。
一方、言語学の観点からは、音韻の変化(音声の揺らぎ)としてこの現象を説明できる。「うろ」の「オ段」の音が、口の開きが小さくなる「ウ段」の「うる」へと無意識に変化したと考えられるのだ。さらに「うっすら覚えている」というニュアンスが重なった結果、「うる覚え」という誤用が口になじみやすくなったと分析されている。語源を知れば、「うろ覚え」こそが本質を突いた表現であることが理解できるはずだ。