『One more time, One more chance』の歌詞の意味を紐解く上で欠かせないのが、山崎まさよしがプロデビューを果たす前後の制作秘話やエピソードです。本作は1997年1月22日に4枚目のシングルとしてリリースされましたが、原曲の原型は彼が山口県から上京した1993年頃、まさに生活環境が激変する中で書き上げられていました。
歌詞に描かれているのは、ある日突然途絶えてしまった恋の記憶と、日常のあらゆる瞬間に別れた相手の幻影を追ってしまう青年の生々しい心理描写です。「明け方の街 桜木町で」「向かいのホーム 路地裏の窓」「こんなとこにいるはずもないのに」といった具体的な情景描写は、実際に彼が当時暮らしていた神奈川県周辺の風景や、孤独の中で抱いていた焦燥感が色濃く投影されています。
当時、自身初主演を務めた映画『月とキャベツ』(1996年12月劇場公開)の主題歌として起用されるにあたり、監督である篠原哲雄との対話や映画の世界観を反映させながらブラッシュアップされ、完成形へと至りました。単なるフィクションのラブソングではなく、若き日の山崎まさよしが抱えていた生身の喪失感と孤独が刻まれているからこそ、聴き手の胸を締め付ける説得力を持っています。