サザンオールスターズの80年代ヒット曲群において、『ミス・ブランニュー・デイ』はサウンド・メッセージの両面で大きな転換点となった作品です。当時、キーボードの原由子が産休から復帰するタイミングであり、バンドは新たなサウンドアプローチを模索していました。そこで導入されたのが、当時最先端だったシンセサイザー・プログラミングです。
桑田佳祐の作詞作曲によるメロディに、マニピュレーターの藤井丈司が構築した鋭角的なデジタルシーケンスを融合。従来の泥臭いサザンロックや歌謡曲的アプローチから脱却し、ニュー・ウェイヴやユーロビートの質感を大胆に取り入れました。哀愁を帯びたマイナーコード進行と疾走する16ビートのコントラストは、音楽評論界や当時のチャートシーンに鮮烈なインパクトを与えました。
この先鋭的なサウンドスケープを用意したからこそ、桑田佳祐はそこに単なるラブソングではなく、極めて毒性の強いメッセージを乗せる必然性を見出していたといえます。