2010年代に入り、全国の自治体で暴力団排除条例が相次いで施行されたことで、潮目は完全に変わった。警察庁が推し進めた「暴力団に資金を提供しない、威力を利用しない、交際しない」という三原則は、地域に密着する商業施設や浴場経営者にも明確なコンプライアンスを迫ることとなった。
特に国内最大の指定暴力団である山口組をはじめとする組織に対する社会的な包囲網は日増しに強まった。条例の成立以降、暴力団員が組織の威力を背景に入浴し、一般客を威圧した場合には、店側だけでなく警察への通報義務や法的なペナルティが意識されるようになったのである。
これにより、かつては見過ごされることもあった「常連の組員」でさえも、浴場から姿を消すこととなった。警察庁からの行政指導や地域警察署との密接な連携のもと、銭湯は文字通り「暴排の最前線」として機能することを余儀なくされたのだった。