最先端の分子生物学が突き止めたのは、生物が飢餓やストレスといった過酷な環境を生き抜くために備えた生存防御システムだった。哺乳類の体内にはSIRT1からSIRT7まで7種類が存在する。なかでも中心的な役割を担うのがSIRT1だ。この酵素はヒストン脱アセチル化酵素として機能し、遺伝子の発現を精密にコントロールする司令塔のような役割を果たす。
細胞が分裂を繰り返すたび、エピゲノムと呼ばれる情報伝達の仕組みにはノイズが溜まる。読み取りが狂った設計図から作られる細胞は、本来の機能を失い、やがて老化細胞へと変貌を遂げていく。サーチュインはこの情報ノイズを拭い去り、DNAの傷を修復する作業員を的確な現場へと送り込む。まさに細胞の若さを守る番人なのだ。