診断確定後、森永氏は抗がん剤治療(ドセタキセルなど)を開始しました。しかし、70kg前後あった体重は一気に50kg前後へと急減します。食欲不振、全身の激しい倦怠感、毛髪の脱落、激しい悪心といった強烈な副作用に襲われ、一時は起き上がることすら困難な状況に追い込まれました。
この過酷な局面に光を当てたのが、ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏の研究から生まれた免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」の投与でした。原発不明がんの適応承認を活用し、遺伝子パネル検査の結果と照らし合わせた主治医の判断により、オプジーボを中心とした免疫療法への切り替えが決断されたのです。
投与開始後、事態は劇的に好転しました。数万単位にまで跳ね上がっていた腫瘍マーカーは正常値近くまで激減し、画像診断でも転移巣の縮小・消失が確認されるという、医師団も息を呑む「劇的奏効(スーパーレスポンダー)」の兆候が現れました。公表当初に囁かれた悲観的な予測を覆し、2024年の春、夏、そしてそれ以降も確かな足取りで公の場に立ち続ける基盤は、この奇跡的な薬効と本人の並外れた生命力によって築かれました。