温度管理と並んで重要なのが、葉と茎の細胞壁を意図的に破壊する物理的アプローチです。シニグリンは液胞に、ミロシナーゼは細胞質に隔離されているため、細胞を物理的につぶさなければ混ざり合いません。以下の葉わさびの下処理方法を順序通りに実践することで、プロレベルの辛味を引き出すことが可能になります。
まず、葉わさびをボウルに張った冷水で丁寧に洗い、泥やゴミを落とします。水気をしっかり切ったら、茎と葉を3〜4cm幅の食べやすい長さに切り揃えます。ここからが極意となる塩もみと叩きの手順です。
ボウルに切った葉わさびを入れ、全体重量の約2〜3%の粗塩を振ります。手のひら全体重をかけてギュッギュッと強く揉み込み、全体がしんなりして濃い緑色の水分(アクを含んだ水分)がにじみ出るまで約2分間しっかりと揉み続けます。さらに、すりこぎ棒や包丁の背を使ってまな板の上でリズミカルに全体を叩き、頑丈な茎の繊維組織を徹底的にクラッシュさせます。
続いて、ザルにあけて75〜80℃に調整したお湯を回しかけ、菜箸で全体を素早く10〜15秒ほど泳がせたら、即座に冷水に落として色止めを行います。水気を両手でこれ以上絞れないという限界まで固く絞り切ります。
そして、決定打となる裏技が葉わさびの密閉容器振り方です。水気を絞った葉わさびを清潔なタッパーやスクリューキャップ式の保存瓶に入れ、蓋を完全に閉めます。この容器を上下左右に約30〜50回、腕全体を使って激しく振りまくります。激振りの衝撃によって微細な細胞破壊がさらに進むと同時に、揮発した辛味ガスが密閉空間内に充満し、葉わさび全体に強烈な刺激が再浸透します。振った後は蓋を開けず、そのまま粗熱を取ることでアリルイソチオシアネート活性化がピークに達します。