毎年秋になると、英ラドブロークス(Ladbrokes)やニッカ(NicerOdds)などのブックメーカーが発表するオッズ表がワイドショーを席巻します。村上春樹は長年にわたり倍率3倍〜10倍前後の上位トップ10に名を連ねていますが、この数字の性質を正しく理解する必要があります。
ブックメーカーのオッズは、アカデミー内部の選考情報を反映したものではありません。選考プロセスの記録は厳格に50年間非公開と定められており、外部へ情報が漏洩することは基本的にありません。オッズはあくまで世界中の一般投票者やベッターの賭け金総額、過去の知名度、メディアの評判に基づいて変動する「商業的予測値」に過ぎないのです。
知名度が高くファン層が厚い村上春樹には自然と賭け金が集まり、結果としてオッズが引き下げられて倍率上位に居座り続ける構造が生まれます。メディアはこの数値を「受賞の確実性」としてセンセーショナルに報じ、発表の瞬間の失望感を増幅させるサイクルを繰り返してきました。オッズの高さは作品の文学的達成ではなく、「世界中で最も広く愛読されている現代作家」という人気の高さを証明する指標と捉えるのが適切です。