貴景勝を大関へと押し上げ、現役引退に至るまで支え続けた佐藤家の物語は、母・純子さん一人の力によるものではありません。厳格な指導者であった父・佐藤一哉(さとう かずや)さんの存在、そして後に関係を結ぶ妻・千葉有稀奈(ちば ゆきな)さんとの強固な家族の絆が存在します。
実業家にして空手指導者・父の一哉氏が敷いたレール
父の一哉さんは、かつて極真空手で腕を鳴らした筋金入りの武道家であり、社会に出てからは保育園経営や不動産業などを手掛けた敏腕実業家としても知られています。その経済力があったからこそ、芦屋という一等地で毎月数十万円に及ぶ食育費用を惜しみなく投じることが可能でした。
一哉さんの指導方針は徹底したスパルタでした。幼少期の貴景勝に対し、空手の蹴りや突きを叩き込み、相撲へ転向した後も自宅に本格的な稽古場のような環境を整えて二人三脚で汗を流しました。時に厳しすぎるほどの叱咤激励を浴びせる父に対し、母の純子さんは決して口を挟むことなく、傷ついた息子の体を温かい風呂と極上の手料理、そして柔らかな笑顔で迎え入れる「絶対的な避難所」としての役割を完遂したのです。
元大関の娘・元モデルの妻へと受け継がれた「大関を支える女性のバトン」
2020年、貴景勝は大関在位中に元モデルの千葉有稀奈さんとの婚約・結婚を発表しました。有稀奈さんは、「北海の白クマ」の愛称で国民的人気を博した元大関・北天佑(二十代湊川親方)の次女であり、角界の伝統と厳しさを骨の髄まで知る名門の令嬢です。
モデルとしても活躍した有稀奈さんは、純子さんと同様に際立つ美貌の持ち主として大きな注目を集めました。結婚後は表舞台から退き、アスリートフードマイスターなどの知見を活かして夫の体重管理と体調維持に心血を注ぎました。かつて純子さんが芦屋の実家で注ぎ込んだ無償の愛と食育のバトンは、妻である有稀奈さんへと見事に受け継がれ、度重なる怪我と戦い続けた大関の土俵生活を最後まで下支えしたのです。