『ちはやふる』全編を通じ、読者の価値観を根底から揺さぶる最大の言葉といえば、白波会を率いる原田秀雄先生のこのセリフに尽きます。
「青春ぜんぶ懸けたって強くなれない? 懸けてから言いなさい」
小学生時代から圧倒的なかるたの才能を誇る綿谷新に対し、どれだけ努力しても追いつけない自らの限界を感じ、「あいつには勝てない」と弱音をこぼした太一。そんな彼に対して原田先生が放った一言です。結果が出る前から諦めの予防線を張り、傷つくことを恐れる太一の甘えを、鋭い刃のように一刀両断しました。
このセリフが読者の胸をえぐるのは、私たちが日常生活で無意識に使ってしまう「どうせ自分には才能がないから」「頑張っても無駄だから」という言い訳を容赦なく打ち砕くからです。限界を決めるのは才能ではなく、「すべてを差し出して挑んだかどうか」であるという真理を、人生経験豊富な師の言葉として堂々と突きつけています。