ガチャピンを語る上で欠かせないのが、1990年代から『ポンキッキーズ』内で本格化した「ガチャピン チャレンジ」シリーズです。ダウンヒルを時速60km以上で滑走するスキー、大波を華麗に乗りこなすサーフィン、難関コースを攻めるモトクロス、さらにはフィギュアスケートやパラグライダー、スキューバダイビングまで、その挑戦は枚挙にいとまがありません。
着ぐるみを着用してのスポーツ経験がある関係者なら誰もが知る通り、通常の着ぐるみは内部の温度が急上昇するだけでなく、視界は目元や口元に開けられた幅わずか数センチのメッシュスリットに限られます。足元や手元の感覚は厚いウレタンやボア生地に阻まれて極めて鈍くなり、平衡感覚を保つことすら至難の業です。
その極限状態にありながら、なぜガチャピンはプロ顔負けのライディングやターンを披露できるのか。その背景には、卓越した身体能力を持つスーツアクターの存在と、極限の安全管理を担う専門制作チームの存在がありました。
関係者の証言や当時の制作スタッフの回顧録によると、日常パートの愛らしい演技から基本的なアクションまでを一手に引き受け、ガチャピンの「魂」を長年形作ってきた中心人物が、スタント界のレジェンドと呼ばれる大坂成史(おおさか・しげふみ)氏です。特撮番組やアクション映画で活躍していた大坂氏の驚異的な体幹と運動センスがあったからこそ、初期のガチャピンは着ぐるみの制約を感じさせない軽やかな動きを実現できました。業界内では長年「オオサカさんが凄すぎて代わりがいない」と語り継がれていたほどです。