皮膚症状に加えて呼吸器症状や循環器症状が複数同時に現れる状態を「アナフィラキシー」と呼び、さらに急激な血圧低下によって脳や主要臓器への血流が途絶え、意識障害に陥る状態を「アナフィラキシーショック」と定義します。この段階に達すると、数分間の対応の遅れが致命傷になり得ます。
緊急事態に直面した際、救命の鍵を握るのがアドレナリン自己注射薬(エピペン)の存在です。エピペンは毛細血管を収縮させて血圧を上昇させ、同時に気管支を拡張させて呼吸不全を防ぐ強力な薬剤です。日本アレルギー学会のガイドラインでも、明らかな呼吸困難やぐったりとした意識混濁が見られる場合は、「迷ったら打つ」という迅速な決断が強く推奨されています。
現場で迷わず行動するための手順は以下の通りです。
- 注射部位の確保:ズボンの上からでも構わないため、太ももの前外側(外側広筋)を露出または確認する。
- 安全キャップの解除:青い安全キャップをまっすぐ引き抜く(オレンジ色の先端には絶対に触れない)。
- 垂直に強く打ち込む:太ももの外側にオレンジ色の先端を直角に向け、「カチッ」と音がするまで強く押し付ける。
- 5秒間保持:薬剤を完全に注入するため、太ももに押し当てたまま5秒間静止し、抜いた後は注射部位を軽くもみほぐす。
- 即座の救急要請と体位管理:直ちに119番通報を行い「ピーナッツ誤食によるアナフィラキシーでエピペンを使用済み」と伝える。患者を急に立たせたり座らせたりすると心停止を誘発する恐れがあるため、足を30cmほど高くした仰臥位(仰向け)を維持する。嘔吐がある場合は顔を横に向ける。