絵を描くのが苦手な人が陥りがちな最大の罠は、「目に見えるものをそのまま細部まで再現しようとすること」だ。プロのイラストレーターが口を揃えて指摘するのは、シルエットの簡略化である。複雑な景観や建造物も、ベースは幾何学模様の組み合わせで成り立っている。
法則の1つ目は「図形への置き換え」だ。たとえば八ツ橋やたこ焼きなら「三角」と「丸」、木造建築なら「長方形と台形」といった具合に、まずは大きな形だけを鉛筆で薄く捉える。2つ目は「特徴的な1パーツだけを強調すること」。新幹線なら先頭の傾斜、五重塔なら重なる屋根の段数とてっぺんの相輪(金属の飾り)だけを描けば、他の部分はどれほど適当でも人間の脳はそれを正確に認識してくれる。
そして3つ目が「線の太さを均一に保つこと」だ。強弱をつけすぎるとアンティークな雰囲気になり、かえって線の乱れが目立つ。細めのサインペンやタブレットの固定ブラシで一気に引く線こそが、今どきの洗練されたポップさを生み出す。