物語のクライマックスは、涙なしには語れない衝撃と切なさに満ちています。ゆきの目を治す唯一の方法が「山奥深くの険しい谷に咲く幻の花(竜の涙)」にあると知った鬼は、命を落とす危険も顧みず、過酷な旅に出て薬草を手に入れます。
鬼の献身によってゆきは視力を取り戻し、世界に光が戻る奇跡が起きました。しかし、その直後、村の猟師たちが「娘を襲う凶暴な鬼」と誤解し、鬼に向けて鉄砲の引き金を引いてしまいます。
銃弾に撃ち抜かれ、激痛に苦しむ鬼。今まさに息絶えようとする瞬間、目が見えるようになったゆきが自分へと駆け寄ってくる姿が視界に入ります。鬼は「初めて自分の姿を見るゆきを、苦痛に歪んだ恐ろしい顔で怯えさせてはいけない」と懸命に耐え、最期の力を振り絞って、いつものおどけた「べっかんこ」の笑顔を作ったまま息を引き取りました。
ゆきが生まれて初めてその目で見た鬼の姿は、血を流しながらも、最高のおどけ顔で笑っている優しい友達の死に顔でした。このあまりにも無垢で痛烈な自己犠牲のラストシーンこそが、世代を超えて読者の胸を締め付け、号泣を誘う最大の理由です。