インターネット上には、夜驚症に関する多くの誤情報や偏見が根強く残っています。特に保護者を精神的に追い詰める2大誤解を解く必要があります。
第1の誤解は「夜驚症は愛情不足や親のストレス、トラウマが原因である」という言説です。昭和から平成初期にかけて流布した精神分析的な俗説ですが、現代の睡眠医学では明確に否定されています。直接の引き金となるのは、慢性的な睡眠不足、日中の極度の肉体疲労、就寝前の激しい興奮、発熱(高熱)、環境変化などの身体的・生理的ストレスです。
第2の誤解は「夜驚症を発症するのは発達障害の兆候である」という極端な言説です。実態として、夜驚症と発達障害の関連については慎重な見極めが必要です。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の子どもは、中枢神経の覚醒調節の偏りや感覚過敏、睡眠構築の不安定さを持つケースが多く、パラソムニアの合併率が定型発達児より統計的に高いことは知られています。しかし、夜驚症があるからといって即座に発達障害と結びつくわけではありません。発達障害の診断は、日中のコミュニケーションや社会性、反復行動などを包括的に評価するものであり、夜間の睡眠時随伴症単体で判断することは不可能です。
さらに盲点となりやすいのが、成人になってから発症するケースです。大人の夜驚症の原因は、小児のような脳の発達未熟ではありません。成人の発症では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)による頻繁な中途覚醒、過度の精神的ストレス、アルコールの多量摂取、睡眠剥奪、抗うつ薬などの薬剤性影響が疑われます。大人の場合は夢遊病(睡眠時遊行症)を併発して車を運転しようとしたり、他者に危害を加えたりするリスクがあるため、放置は禁物です。