ネットの検索窓にキーワードを打ち込むとサジェストされる「有毒ガス」という物騒なワード。多くの利用者が抱く最大の恐怖は、家庭用洗剤でよく知られる「混ぜるな危険」の事故と同じ現象が起きるのではないかという疑念です。
化学的な結論を述べるなら、重曹とお酢を混ぜても有毒ガスが発生することは一切ありません。発生している激しい泡立ちの正体は、純粋な炭酸ガス(二酸化炭素=$CO_2$)です。
弱アルカリ性の重曹(炭酸水素ナトリウム)に酸性の食酢(主成分:酢酸)が接触すると、激しい化学反応が生じ、酢酸ナトリウム、水、そして二酸化炭素に分解されます。この反応プロセスで二酸化炭素が一気に気化するため、炭酸飲料の栓を抜いたときのようなシュワシュワとした発泡現象が起こります。
「有毒ガスが出る」という誤解が広まった背景には、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)とお酢などの酸性物質を混触させた際に発生する「猛毒の塩素ガス」との混同があります。重曹には塩素原子が一切含まれていないため、致死性の気体が発生する化学的経路は原理的に存在しません。
ただし、密閉された換気扇のない極小空間で大量の重曹とお酢を反応させた場合、炭酸ガスの急激な充満によって局所的な酸素濃度低下や息苦しさを感じる懸念はゼロではありません。掃除を行う際は、必ず換気扇を回すか窓を開けて空気の通り道を確保するのが鉄則です。