動画共有サイトで見られる「天井まで届く爆発的な噴出」と、家庭で子どもと一緒に楽しむ実験には、使用している薬品のスペックに決定的な隔たりがあります。その境界線を分けるのが過酸化水素水の濃度と触媒の選択です。
研究機関や派手な映像配信で使われるヨウ化カリウムの触媒作用は強烈です。ヨウ化物イオン(I⁻)が反応を劇的に媒介し、過酸化水素を瞬時に気化させます。しかし、日本の毒物及び劇物取締法において、過酸化水素水は「濃度6%を超えるもの」が劇物に指定されています。一般人が30%濃度の試薬を購入・保管することは極めて厳しく制限されており、安易に入手できるものではありません。
そこで教育現場で推奨されているのが、パン作りに使われるドライイーストの代用です。酵母菌の細胞内には、代謝過程で生じる有害な活性酸素を除去するための「カタラーゼ」という酵素が豊富に含まれています。この生体触媒カタラーゼが、無機触媒であるヨウ化カリウムと同様に過酸化水素を急速分解する働きを担います。ドラッグストアで市販されている3%濃度の消毒用オキシドールとドライイーストを組み合わせることで、小学生でも触れる安全な実験系を構築できるのです。