当時、情報感度の高い層を中心にネット掲示板やSNSで盛んに検索されていたのが熊本夏祭り穴場スポットというワードでした。「公式発表はないが密かに花火が上がる場所がある」「人混みを避けて祭りの熱気を感じられる隠れスポットがあるのではないか」といった噂が独り歩きしたのです。
しかし、当時の現場観察取材が証明した現実は、ネットの楽観論とは大きく異なっていました。例えば、花火のビュースポットとして名高い「花岡山」や「独鈷山(どっこやま)」の展望台には、サプライズ打ち上げを期待した市民が散発的に集まったものの、夜空は静寂を保ったままでした。公式な煙火消費許可が降りていない以上、ゲリラ的な大型打ち上げなど存在し得ないという法規制の現実を、多くの人が現場で思い知ることになりました。
一方で、本物の「穴場」として機能したのは、喧騒を離れた歴史的空間でした。熊本城の北側に位置する旧細川刑部邸周辺や坪井川沿いの遊歩道は、照明演出が施され、夜風を感じながら安全に散策できる数少ないオアシスとなっていました。密集を避けて情緒だけを味わいたいという成熟した鑑賞スタイルが芽生えたのも、この2022年の制約があったからこそでした。