非常ベル誤作動の大きな割合を占めるのが、共用廊下や階段の踊り場にある「発信機」の赤色押しボタンが誤って押されたケースです。引越し作業中の荷物の衝突、子どものいたずら、あるいは体勢を崩した拍子に手をついてしまったなど、原因は多岐にわたります。押しボタンが押されている限り、いくら受信機側の音響停止スイッチを押しても、システムは火災信号を受信し続けるため完全には静まりません。
発信機が押されると、ボタン中央部が窪んだ状態になり、発信機上部の赤い確認灯が点灯します。この状態を解除する「押しボタンの戻し方」には、ボタンの構造に応じた複数の型式があります。
旧型の押しボタン(P型1級発信機など)では、アクリル樹脂の保護板(押し板)を強く押し込む構造になっており、復旧させるには保護板の下部にある爪に指やマイナスドライバーを掛け、手前に引き戻す、あるいは押し板を上部にスライドさせて内部のレバーを操作する必要があります。一方、比較的新しい型式では、押し込まれたボタン自体をもう一度強く押し込むことでロックが外れてカチッと元の位置に飛び出すプッシュ・プッシュ方式や、盤面下部の「復旧」と書かれたリセットレバーを押し下げるタイプが主流となっています。
発信機のボタンを正常な位置に戻したら、速やかに管理室の受信機へ戻り、自動火災報知設備の復旧手順を実行します。受信機の盤面にある「非常ベル復旧ボタン(火災復旧スイッチ)」を押すことで、保持されていた火災受信回路がリセットされ、受信機の「火災灯」や「地区表示灯」が消灯します。最後に、消音のために操作していた「主音響停止」「地区音響停止」スイッチを元の「定位(通常監視位置)」に戻します。スイッチを停止位置のまま放置すると、万が一本物の火災が発生した際にベルが鳴らなくなるため、点検ランプが点滅して警告を発する設計になっています。すべてのスイッチが正常位置に戻り、緑色の「電源灯」のみが点灯している状態を確認して、一連の復旧作業は完了となります。