「新車を購入する店舗でそのまま下取りに出せば、値引きも上乗せされて一番お得になる」という考え方は、現代の中古車流通においては大きな誤解を招く要因となっています。事実、日本自動車査定協会(JAAI)の標準基準と、民間の買取業者が用いるリアルタイムの市場相場には、明確な構造的分断が存在します。
都内の大手国産ディーラーで10年以上営業を担当してきた現役スタッフは、現場の舞台裏を次のように明かします。
「ディーラーの下取り査定は、本部が定めた査定マニュアルに沿った『減点方式』です。内外装の傷や走行距離を差し引いて機械的に基本価格を割り出します。さらに下取り車両は自社の認定中古車として再販できるごく一部の高年式・極上車を除き、系列の業販ルートや提携オークションへ横流しする手数料分をあらかじめ差し引いて安全マージンを確保します。そのため、相場高騰の波をタイムリーに査定額へ反映させることは構造上不可能なのです」
これに対し、車買取専門店は全国に広がる中古車オークションの落札相場をリアルタイムで監視し、「いま業者がいくらで競り落としているか」を基準にした『加点方式』で価格を算出します。オプション装備や社外パーツ、海外輸出の需要動向までを瞬時に反映し、在庫を抱えるリスクを最小限に抑えて回転率で利益を出すため、限界に近い高値を提示できるのです。
さらにディーラー商談で横行しやすいのが「新車値引きと下取り価格の相殺」という販売テクニックです。新車の値引き枠が限界に達した際、下取り額を意図的に低く見積もっておき、「今回特別に下取り額を15万円上乗せします」と見せかける演出が珍しくありません。車両本体の正確な値引き額と、愛車の純粋な市場価値を完全に切り離して評価しない限り、ユーザーは知らず知らずのうちに損失を被ることになります。