この橋の最大の特徴は、文字通り「魚の腹」のように下部が膨らんだ独特の形状にある。専門用語で「レンズ形トラス」とも呼ばれるこの構造は、19世紀のヨーロッパで生まれ、日本には数えるほどしか導入されなかった。強度を保ちつつ鉄の使用量を抑えるための知恵だったが、加工の難しさからやがて廃れていった歴史がある。
なぜ、北九州の山奥にこれほど美しい橋が作られたのか。それは当時の日本が、国家の威信をかけて鉄鋼生産の近代化を進めていたからに他ならない。設計を手がけた沼田淳紀をはじめとする技術者たちのこだわりが、この美しい曲線のなかに息づいている。