なぜ、今このプロジェクトなのか。日本国内の地方都市では、急速な過疎化と高齢化によって、何世代にもわたり口伝で受け継がれてきた独自の歌や祭礼囃子が、文字通り消滅の危機に瀕している。楽譜に記録されていないこれらの歌は、歌い手が途絶えれば二度と取り戻すことはできない。
彼女はこの現状に対して、強い危機感を抱いていた。しかし、単に音声を録音してライブラリに保存するだけの「静的な保存」には疑問を感じていたという。生きた人間が歌い、解釈し、新たな息吹を吹き込むことでしか、音楽は生き残り得ない。クラシック音楽という、世界共通の強固なフレームワークを用いることで、ローカルな歌をグローバルな芸術へと昇華させる。それが彼女の導き出した答えだった。