動画共有アプリやSNSでは定期的に「安全ピンで稗粒腫を取ってみた」「毛抜きで押し出したら白い玉が出てスッキリした」といった動画が数百万回再生を記録します。インターネット掲示板や知恵袋でも「目の周りの白いプツプツ 自分で取る方法」を求める投稿が後を絶ちません。しかし、このセルフ処置こそが皮膚科医を最も悩ませる重大インシデントの温床です。
都内の皮膚科クリニックで月間100件以上の稗粒腫処置を行う院長は、取材に対して現場の実情をこう証言します。「目の周りの皮膚は厚さわずか0.5mm前後と、ティッシュペーパー1枚分ほどの薄さしかありません。そこに家庭用の裁縫針やカッター、ピンセットを突き立てれば、容易に眼輪筋や微細血管を傷つけます。『白い玉が出たから成功』と喜ぶ患者さんもいますが、後日、針の雑菌による蜂窩織炎(ほうかしきえん)や、傷口がケロイド化・クレーター化した状態で駆け込んでくるケースが年間数十件に上ります」。
稗粒腫を針で潰すリスクは、単なる雑菌感染だけにとどまりません。稗粒腫の角質塊は強固な嚢胞壁(カプセル)に包まれており、医療機関では滅菌された極細注射針(27G〜30G)を用いて表皮に極小の切開を入れ、専用の圧出器(面皰圧出器・コメドプッシャー)で均一な圧力をかけてカプセルごと排出させます。素人が力任せに押し出そうとすると、カプセルが皮下で破裂し、ケラチンが異物として真皮内に散乱します。その結果、激しい異物肉芽腫反応が引き起こされ、治癒後も赤黒い色素沈着や凹凸が半永久的に残ってしまうのです。