なぜ、この峠ではこれほどまでに特別な空気が流れているのか。その最大の理由は、地球規模の地質学的な背景にある。ここには、九州から関東へ向かって日本列島を横断する巨大な断層帯「中央構造線」が走っている。地球の地殻変動によって互いに押し合う巨大な地層のエネルギーが、まさにこの地点で衝突し合っているのだ。
国土地理院が公表する地質データや地図を見ても、このエリアが極めて複雑でダイナミックな断層線上に存在することがよくわかる。地磁気同士が互いに打ち消し合い、磁場の値がほぼゼロに近い状態となる「ゼロ磁場」と呼ばれる現象が発生するのも、こうした地球内部の激しい歪みが生む奇跡の産物だ。科学と神秘が背中合わせに存在する場所、それがこの峠の真実である。