本作の代名詞ともいえるのが、放課後の無人の教室、教卓の陰に身を潜めた櫻井ハルカ(山下智久)が、前立腺を刺激するような緊張感の中で枢木ゆに(小松菜奈)に唇を重ねる「教卓キス」の場面です。公開当時の完成披露試写会や各種エンタメメディアの取材記録によると、このシーンは熊澤尚人監督のミリ単位に及ぶ構図へのこだわりから誕生しました。
教卓という狭小な空間に大人の男性教師と女子高生が隠れるシチュエーションは、一歩間違えれば不自然な体勢になりかねません。関係者の証言によると、現場では山下智久の長い手足を美しく収めつつ、小松菜奈の神秘的で感情を押し殺した表情に絶妙な光が当たるよう、照明とカメラアングルが何度も入念に調整されました。山下自身も当時のインタビューで「教卓の下に入る機会なんて大人になってからはないので、かなり新鮮だった」と語りつつ、教師と生徒という絶対的な一線を越える背徳感と純粋な恋情が交錯する演技に極限まで集中したことを明かしています。
また、ファンの間で長年議論を呼んでいるのが、実写映画と原作漫画における「結末(ラストシーン)」の差異です。映画版の結末は、一度はハルカの将来を案じて身を引いたゆにが海外留学へと旅立ち、数年後に美しい海辺の灯台の前でハルカと奇跡的な再会を果たし、抱き合って愛を再確認するという情緒的なオープンエンドに近い演出が取られました。
一方、講談社『別冊フレンド』で連載され全10巻で完結した原作漫画では、二人のその後の人生がより踏み込んで描かれています。大学進学や社会的立場を乗り越えた末に正式に結ばれ、最終的には結婚式を挙げ、さらには子供を授かるエピソードまでが丁寧に描写されました。映画版が「美しくロマンティックな恋愛映画としての幕引き」を選んだのに対し、原作は「二人が生涯を共に歩むパートナーシップの確立」を描き切った点に、媒体ごとの明確な演出意図の違いが表れています。