鷲羽山ハイランドを全国的な知名度に押し上げた最大の功労者であり、同時に来園者の心胆を寒からしめる元凶が「スカイサイクル」です。地上16m(ビル4階相当)、しかも瀬戸内海を見下ろす断崖絶壁の高台にレールが敷設されており、乗客は2人乗りのサイクル型ライドに乗って自力でペダルを漕ぎ進めなければなりません。
最新鋭のハイテクコースターがミリ単位の電子制御と頑丈なハーネスで安全を担保するのに対し、スカイサイクルの乗員を守るのは簡易的なシートベルトと剥き出しのフレームのみです。海風が吹き抜けるなか、カーブを曲がる瞬間に感じる横滑り感や、ペダルを踏み込むたびに伝わるアナログな振動が、人間の脳幹にある原初的な高所恐怖を容赦なく刺激します。これが「世界一怖いスカイサイクル」と恐れられる心理的・構造的メカニズムです。
過去の事故や歴史について調査すると、長年稼働している遊具であるため定期メンテナンスによる運休や点検調整は頻繁に行われているものの、軌道からの転落といった致命的な大事故を起こした記録はありません。建築基準法および遊戯施設安全基準に基づいた厳正な法定点検が定期的に実施されています。つまり、利用者が感じる「いつ壊れてもおかしくないようなスリル」は、むき出しの構造と目下に広がる本物の絶景が引き起こす脳の錯覚であり、安全対策を講じた上で成立している極限のエンターテインメントと言えます。