作中屈指のパワーワードである「檀黎斗神」という呼称は、突発的な思いつきで生まれたものではありません。物語の劇的な転換点と、キャラクター自身の狂気的なアイデンティティの確立が密接に結びついています。
元々、ゲーム制作会社「幻夢コーポレーション」の若きCEOとして登場した檀黎斗は、仮面ライダーゲンムとして主人公・宝生永夢たちの前に立ちはだかる冷酷無比な黒幕でした。しかし、第23話においてパラドの策略によりバグスターウイルスの毒に侵され、最初の「死亡(ゲームオーバー)」を迎えます。その後、第30話でポッピーピポパポのバグヴァイザー内に保存されていた生体データからバグスターとして復活。この復活直後、衛生省の隔離スペースとなっていた聖都大学附属病院のCR(電脳救命センター)において、彼は自らを「新檀黎斗(しんだん くろと)」と再定義しました。
ファンが注目すべきは、そこから「檀黎斗神」へと至るステップです。決定的な転機となった初登場回は、2017年8月6日に放送された第42話「Resetされたゲーム!」でした。永夢たちの最強フォームの力を無力化する父・檀正宗(仮面ライダークロノス)の能力「リセット」に対し、自らの「神の才能」をもって対抗策を編み出した黎斗は、突如として周囲にこう宣言します。
「私の名は、新檀黎斗ではない……檀黎斗神だ!」
この改名の元ネタと背景には、脚本を手掛けた高橋悠也氏とプロデューサー陣が仕掛けた周到な意図がありました。土管から飛び出す奇行で親しみやすいマスコットと化していた「新檀黎斗」の枠組みを自ら破壊し、生命をも超越したクリエイターとしての全能感を誇示すること。つまり、絶対悪の父親に屈しない唯一の存在として、己の魂を「神」へ昇華させた瞬間でした。