リムル・テンペストのビジュアルを語る上で欠かせないのが、メディアごとに異なるアプローチで描かれた「公式イラスト」の多重構造です。原作小説のイラストを担当するみっつばー氏が提示した初期ビジュアルは、光と影のグラデーションを活かしたアクリル・水彩画のような透明感を極限まで追求しています。特に銀青色の長髪が見せる繊細な毛先の散り方や、どこか憂いを帯びた瞳の表現は、リムルが元は日本人男性(三上悟)でありながら、運命を背負った少女シズの肉体と遺志を受け継いだという深層心理を静かに物語っています。
一方、月刊少年シリウスで連載される川上泰樹氏のコミカライズ版は、漫画ならではの明快な主線と感情表現の豊かさが最大の魅力です。伏瀬先生の原作が持つユーモアとシリアスな世界観を、メリハリの利いた陰影と生き生きとしたデフォルメで立体化させました。口を大きく開けて仲間と談笑する人間体の無邪気な笑顔から、敵対者を圧倒する鋭い眼光まで、表情の振れ幅の広さが読者の感情移入を決定づけています。
アニメ版の設定資料を検証すると、この両者のエッセンスを極めて高いレベルで融合させていることが浮き彫りになります。人間体のデザインにおいて意識されているのは「少年とも少女とも取れる完璧な中性性」です。肩幅と腰回りのラインは意図的に肉感を削ぎ落とし、顎のラインは極端に尖らせず柔らかなカーブを描くよう設計されています。シズの面影を強く宿しながらも、内面から滲み出る理知的で飄々とした雰囲気を損なわない黄金比こそが、公式ビジュアルが多くのクリエイターを惹きつける揺るぎない根拠です。