毛利郁子は1938年(昭和13年)、高知県に生まれました。高校卒業後に大映京都撮影所へ入社し、1950年代半ばから本格的な銀幕デビューを果たします。当時の大映京都といえば、市川雷蔵や勝新太郎といった看板スターを擁し、重厚な時代劇や先鋭的なエンターテインメント作品を次々と世に送り出していた名門スタジオでした。
清純派ヒロインが主流だった時代において、毛利郁子は日本人離れしたグラマラスなプロポーションと切れ長の涼しげな瞳を武器に、悪女、情婦、妖女といった一筋縄ではいかない役柄を一手に引き受けました。『座頭市』シリーズや『眠狂四郎』シリーズにおいて、主人公を手玉に取ろうとする凄みのある仇役を怪演し、映画ファンの間で唯一無二のポジションを確立していきます。
とりわけ彼女の名を後世まで不朽のものとしたのが、1968年公開の大映特撮時代劇『妖怪百物語』です。劇中で演じた「ろくろ首」の怪異は、首を長く伸ばしながら妖しく微笑む艶然とした姿が観客に強烈なトラウマと魅了を同時に植え付けました。美しさと不気味さが同居するその造形美は、昭和特撮史を語る上で欠かせない象徴的な名シーンとして評価されています。