椅子に座るたびに飛び上がるような痛みが走る背後には、臀部特有の解剖学的・物理的負荷が存在します。人間の臀部は体重の大部分を支える部位であり、着座時には毛細血管が圧迫されて局所的な血流障害が生じます。さらに下着や衣服による恒常的な摩擦、通気性の低下による湿度の上昇が重なり、細菌が急増する温床が形成されます。これがお尻おでき痛い座れない原因の根本的なメカニズムです。
多くの人が混同しやすいのが「お尻ニキビ」と「おでき(癤:せつ)」の違いです。一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)は、皮脂の過剰分泌や角化異常によって毛穴が詰まり、皮脂を好むアクネ菌(Cutibacterium acnes)が増殖して起きる比較的浅い炎症です。一方、お尻にできる本格的なおできの多くは、皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌が毛穴の奥深く(毛包から周囲の皮下組織)に侵入して起こる深在性の細菌感染症です。
黄色ブドウ球菌は強力な毒素や酵素を放出し、周囲の組織を融解させながら急速に膿を形成します。浅い炎症にとどまるニキビと異なり、皮膚の奥深くに強い内圧がかかるため、体重の圧力が加わった際に神経を強烈に刺激し、「座ることすら耐えられない」ほどの激痛を引き起こすのです。