事の発端は2010年2月9日、バンクーバー五輪に向かう日本代表選手団が成田空港を出発した際の姿でした。国母和宏氏は、日本オリンピック委員会(JOC)の公式スーツを身につけながらも、ネクタイを極端に緩め、シャツの裾をスラックスの外に出し、ズボンを骨盤の下まで下げる、いわゆる「腰パン」スタイルで搭乗ゲートに現れました。サングラスとドレッドヘアという出立ちも相まって、空港での映像が報じられるや否や、全日本スキー連盟(SAJ)やJOCの電話回線がパンクするほどの抗議が殺到したのです。
現地バンクーバーに到着した直後、事態を重く見た首脳陣によって急きょ招集されたのが、あの伝説的な緊急記者会見でした。公式ウエアを着用し直して会見場に現れた国母氏に対し、メディアの追及が集中します。その重苦しい空気の中、記者から服装についての自覚を問われた際に放たれたのが「反省してまーす」という軽薄とも受け取れる一言でした。
さらに質問が続くなか、マイクが拾った小声の「チッ、うっせえな」という舌打ちが放送電波に乗ったことで、世論の怒りは頂点に達しました。日本代表としての品位を欠くとして、JOCおよび全日本スキー連盟は開会式への参加自粛処分を即座に決定。ネット掲示板やSNS上には数万件規模の激しい非難が書き込まれ、出国からわずか数日で日本中が彼を断罪する異様な過熱報道へと雪崩れ込んでいきました。