ネット上の言説を見渡すと、「日本全国の養鶏場が壊滅して卵が底をついた」「食品メーカーが買い占めている」といった過度な陰謀論や極端な誤解が散見されます。しかし、公的統計や物流データを精査すると、卵品薄の真相は「日本から卵が消えた」のではなく、「特定ルートへの局所的偏在」であることが分かります。
国内で消費される鶏卵のうち、私たちがスーパーで購入する「殻付き卵(テーブルエッグ)」は約半分に過ぎません。残りの約5割は、マヨネーズ製造、外食チェーン、コンビニ向けのお弁当・サンドイッチ、製菓・製パン工場などで使われる「加工用・業務用卵」です。業務用流通では、サプライチェーンの停止を避けるために数か月単位の長期供給契約(クオータ制)が結ばれており、優先的に枠が確保されます。
その結果、突発的な減産が起きた場合、しわ寄せの大部分が「スポット調達や日々の発注に依存する一般小売の店頭」へと集中します。つまり、街のお菓子屋さんやコンビニの卵サンドは通常通り販売されているにもかかわらず、家庭用スーパーの卵コーナーだけが空っぽになるという、奇妙なねじれ現象が発生するのです。
また、「安価な卵」だけが売り切れており、平飼い卵やビタミン強化卵などのプレミアム卵(1パック400円〜500円台)は夕方でも棚に残っているケースが多々あります。消費者が「卵がない」と感じる実態の多くは、「日常的に買える価格帯の汎用卵が売り切れている」状態を指しているという点も、見落としてはならない盲点です。