事件発生直後からメディアのカメラの前に立ち、悲痛な表情で情報提供を呼びかけた母親の姿は多くの人々の胸を打ちました。しかしその一方で、匿名掲示板やSNS上では、母親の証言内容や家庭環境に関する過度な穿ち見や、事実無根の憶測が急速に拡散する事態に発展しました。
なぜ母親に対する根拠のない疑念が一部で取り沙汰されたのか。その引き金となったのは、「最後の会話のニュアンス」と「家を出た際の所持品」に関する証言でした。報道陣に対して母親が語った「普段と変わらない様子で『すぐ戻る』と言って出かけた」「財布や携帯電話は部屋に置いたままだった」という説明に対し、一部のネットユーザーが「計画的な家出にしては不自然」「家族間でのトラブルを隠しているのではないか」といった極端な解釈を付与したのです。
しかし、捜査本部の関係者への取材や公表資料を突き合わせると、家族に対する警察の事情聴取や家宅捜査は初動段階で徹底的に実施されており、母親や家族が事件に直接関与したことを示す客観的証拠は一切存在しません。家族への風評被害は、未解決事件における現代ネット社会特有の集団心理と「スケープゴート探し」の弊害そのものであるといえます。