「梅の酸味を期待して食べたら、普通のあんこ餅だった」という声は、SNSや旅行レビューでも頻繁に見受けられます。結論から言えば、梅ヶ枝餅の原材料はもち米・うるち米・小豆・砂糖・塩のみで構成されており、梅肉や梅エキスは一切含まれていません。中央に刻印されているのは、太宰府天満宮の神紋である「梅鉢紋(うめばちもん)」の焼き印です。
この名称の起源は、平安時代初頭の延喜元年(901年)にさかのぼります。無実の罪で京都から大宰府へと左遷され、極貧の軟禁生活を強いられていた菅原道真公。食事にも事欠いていた道真を不憫に思った安望寺(現・榎社周辺)の近くに住む老婆「浄妙尼(じょうみょうに)」が、道真公の好物だった粟餅を梅の枝に刺し、格子窓越しに差し入れたことが始まりと伝えられています。
さらに延喜3年(903年)に道真公が亡くなった際、浄妙尼がその遺骸の棺に梅の枝を添えた餅を供えて供養したという伝承も残されています。つまり「梅ヶ枝餅」という名は、梅の味付けを指すのではなく、「梅の枝に添えて手渡された慈愛の餅」という歴史的情景そのものを表しているのです。